夏のスタミナ食として、国民食とも呼べる、
「うなぎ」ですが、天然の「ニホンウナギ」が、
絶滅危惧種に指定されたのを、ご存知でしょうか?
普段は、冷凍うなぎを食べているけど、
年に数回、特に『土用丑の日』だけは、ちょっと贅沢して、
うなぎ専門店で、国産のうな重を食べるのが楽しみ!
なんて方も多いかもしれませんね?
日本うなぎが、絶滅危惧種に指定されたことで、
「あ~、ということは、天然のうなぎは食べられないのかな?
ま、どうせ食べているのは養殖だし関係ないか…」
なんて、軽く考えている方もいるかも知れません。
しかし、養殖うなぎだって、このままでは、
食べられなくなる日が、来るかもしれないんですよ!!
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日本うなぎが絶滅危惧種に!
6月12日、国際自然保護連合(IUCN)が、日本うなぎを、
絶滅の恐れがある野生生物として、「レッドリスト」に加えました。
うなぎは、世界各地に18種ほど確認されています。
そのうち、日本で流通しているうなぎは、
ニホンウナギやヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、
ビカーラウナギの4種類となっています。
しかし、日本で食されるうなぎの、いずれもが、
絶滅危惧種に指定されているのです。
- 世界のうなぎ消費量の約7割を日本が占める
- 日本で食されるうなぎのいずれもが絶滅危惧種指定
…という事実をみると、このままでは、
日本人が、うなぎを絶滅に追いやった…
なんて風に、世界中から、
非難の目で見られてしまいそうです。
じゃあもう、ウナギは食べられないの?
今回の「レッドリスト入り」には、法的拘束力はなく、
うなぎの輸入や販売が、規制されるわけではありません。
しかしレッドリストは、ワシントン条約締約国会議で、
国際取引規制を検討する際の、有力な材料でもあります。
次回2016年の、ワシントン条約で、「日本うなぎ」が、
規制対象となれば、商業目的の取引や水揚げが、
規制、あるいは禁止されることになります。
そして、その可能性は高いと言えます。
何故なら、その他のうなぎもすでに、
ワシントン条約で、規制対象となっているからです。
現在、日本で流通するうなぎの99%は養殖で、
天然ものは1%に過ぎません。しかし…
「じゃあ、養殖食べればいいじゃん…
全然問題ないじゃん…」
…というわけには、いかないんですよね…
何故なら、現在のウナギの養殖は、
うなぎの稚魚(シラスウナギ)を捕獲してきて、
それを池に放って、育てているからです。
つまり、うなぎが絶滅してしまったら、
シラスウナギも取れないわけで、
養殖のうなぎも、食べられなくなってしまうのです。
画像引用元:http://mbe.aori.u-tokyo.ac.jp/research/419.html
ご覧のとおり、シラスウナギの漁獲量は、
年々減少していくばかりです。
最盛期のなんと80分の1程度まで、激減しています。
時々、『シラスウナギが豊漁!』
…などと、ニュースになることもありますが、
漁獲量が少ない時と、比較して増えただけであって、
全体的に見ると、やはり減少傾向にあるのは確かです。
わかりやすく図にしてみた。「世界よ、これが日本の豊漁だ!」 pic.twitter.com/b0gP7HqtrI
— 勝川 俊雄 (@katukawa) 2014, 2月 4
このままいくと、本当に、
うなぎが絶滅してしまう可能性さえあるのです。
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希望の光!うなぎの完全養殖に期待!
- これからもウナギを食べたい
- 天然うなぎを絶滅させたくない
…というのならば、解決法は1つです。
うなぎの完全養殖を、実現することです!!
出典:d.hatena.ne.jp
つまり、天然のシラスウナギを捕獲することなく、
うなぎを養殖することが出来るようになれば、
両方の問題を、一挙に解決することができるのです。
何故なら、数年シラスウナギの捕獲をやめるだけで、
絶滅を免れることができる、と言われているからです。
しかし、『うなぎ』は、その生育環境や生態について、
長い間知られておらず、いまだに謎が多い魚であるため、
なかなか完全養殖を、実現することができませんでした。
ウナギの人工孵化は、1973年に、
北海道大学において初めて成功しました。
2002年には、三重県の水産総合研究センター(FRA)が、
うなぎの仔魚(しぎょ)を、シラスウナギに変態させることに成功。
画像引用元:農林水産庁ホームページ
そして、2010年には、世界初となる、「完全養殖」、
つまり養殖2世代目のうなぎの、孵化に成功しました。
しかし、成長する過程において、エサが不明であったため、
9割以上が幼生のうちに死んでしまい、実用化には至りませんでした。
完全養殖の研究が、大きく前進したきっかけは、
これまで謎であった、産卵地を発見したからです。
写真引用元:http://www.asahi.com/eco/TKY201102010617.html
天然のうなぎの卵を、人類が初めて目にしたのは、
2009年のことですから、本当に、つい最近なんですね。
シラスウナギの産卵生態や、最適な環境を解明することで、
「完全養殖」は、実用化に向けて大きく前進しました。
太平洋で採取した幼生を調べ、エサを解明した現在では、
孵化したシラスウナギの9割近くが、成長するに至っているんです!
そして、新たに大型水槽で、人口的に生産した、
シラスウナギの飼育が可能になったため、
現在は低コスト化に向けても、研究が進んでいます。
ただし、まだまだ流通させるには、
時間がかかるようで、環境庁は、
2020年をめどに実用化を考えているようです。
完全養殖が、実用化すれば、
生態系を崩すこともなく、
安定的にウナギを供給するができるのです。
うなぎが食べられればいいわけじゃない!
日本人は、大昔から『うなぎ』を食べてきました。
日本最古の和歌集である『万葉集』にも、
『うなぎ』のことが読まれています。
天平の大昔から、うなぎを食べていたというだけではなく、
うなぎが夏痩せに効く、栄養満点のスタミナ食である、
として知られていた、ということがわかります。
うなぎを食べることは、私たち日本人の大切にしたい、
食文化の1つであると言えるでしょう。
しかし、うなぎは食材資源である前に、
この地球の、貴重な生物生命の一種であることを、
忘れてしまってはいけません。
人間の、いや、我々現代日本人のせいで、
うなぎが絶滅してしまうなんてことには、
してしまいたくないですよね?
薄利多売型の、販売を行うために、
乱獲され、数が減ったことによって、
高値が付き、それがさらなる乱獲を生む…
人間のおろかさが、負の循環を生んでいます。
このままでは、例え天然ウナギの生息数が回復したとしても、
同じ過ちを繰り返すことにも、なりかねません。
昔からうなぎは、水の健全性を計ることのできる、
貴重な生物であると言われてきました。
うなぎは、汚い川にも棲め、
海水、汽水、淡水のどちらでも生き、
皮膚呼吸ができ、ある程度の高さなら登ってさえいけます。
これほど生きる力の強いうなぎが、
今、絶滅の危機に陥っているのです。
もしかすると、うなぎはこれから、
日本人の民度を計ることに、なるのかもしれませんね。
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