うちなーんちゅ(沖縄の人間)は、
異常なまでに悪霊を忌み嫌い、恐れる。
沖縄では悪霊のことを、
「マジムン」とか「ヤナカジ・シタナカジ」などと言う。
「マジムン」=魔物
「ヤナカジ・シタナカジ」=「悪風・汚れた風」直訳
「ヤナ」⇒悪い
「ヤナワラバー」⇒悪がき(ワラバー=子供)
ヤナカジが屋敷内に入り込むと、屋敷は荒れ、
家族に災厄が降りかかると信じられているのだ。
(若い世代には、その意識は希薄だが)
うちなーんちゅが、悪霊の類を心底恐れている証拠に、
悪霊が屋敷内に入り込めないようにと、これでもかっ!!てなぐらいに、
二重にも三重にも厳重な魔除けがされているのである。
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魔除けその1「石敢當」と「シーサー」
沖縄の(?)悪霊は、直進する性質があるようで、
T字路などの道の突き当りや、曲がり角にある屋敷には、
悪霊が家に侵入してくるのを防ぐために「石敢當」が立てられる。
>>石敢當って何?
マジムンは、石敢當にぶつかると、木っ端みじんに砕け散るとされている。
沖縄のそこらじゅうにある石敢當は、
今日も沖縄を、マジムンから守ってくれているのである。
そして、家の入り口付近や屋根には、
守り神の「シーサー(獅子像)」が置かれる。
かわいく、ちょこんと屋根にのっているシーサーは、
飾りとして置かれているわけではない。
「ヤナカジゲーシ」(悪風返し)、あるいは
「ヒゲーシ」(火返し・火避け)として、立派に家を守っているのである。
その効果は、「セコム」よりも強力だとも言われる。
その証拠として、セコム加入者よりも、圧倒的に
シーサーの数の方が多いのだ。
魔除けその2「ヒンプン」
石敢當にもぶつからず、シーサーにも、しかまないで(驚かないで)、
門の中にまで悪霊が入ってきた場合でも、大丈夫!慌てないで!
そんな時にでも、悪霊がそれ以上
家の中までは入り込めないように「ヒンプン」
と呼ばれる強固な防具が置かれているのだ。
ヒンプンは、門と母屋の間に設置され、
風よけや目隠しの用途ばかりでなく、
外部からの邪気除けとして用いられる。
先ほども書いたように、魔物は直進してくるため、
これをはねのけるのである。(魔物はアホなのか?)
ちなみに「ヒンプン」とは、「屏風」の中国読みからきているようだ。
素材としては、一枚石の他、石積みや生垣、板垣や竹製などもある。
最近は、おしゃれなヒンプンやシーサーや石敢當などが、
あちらこちらで見かけられるが、悪霊の侵入を防ぐという点から見ると、
心配な部分も多々あるのである。
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魔除けその3「貝」
屋敷を囲っている塀や、四隅、門や玄関等には、
悪霊の侵入を拒む魔除けの効能があると信じられている「貝」を置く。
貝ならどれでもいいわけではなく、
主に「スイジガイ」や「シャコガイ」という貝。
スイジガイ 出典:ウィキ
シャコガイ
「スイジガイ」を漢字で書くと「水字貝」。
その角をのばしている姿が、崩して書いた「水」という字に見えるからだ。
「水」だから、火除けとして使われるわけ。
ちなみに、火除けだけではなく、
様々な災厄からも守ってくれるようだ。
スイジガイよりも一本角の多い、クモ貝などを魔除けとして、設置する場合もある。どの貝にしろ、貝殻が大きければ大きいほど、戦闘力は高いようだ。
画像出典:ウィキ
ちなみに、本来は貝の穴が見えるように置くのが正解らしい。
(若い人は、反対に飾っている人が多いけど)
貝の穴を表にして飾ると、悪いものを吸い取るという意味もある。
貝を魔除けにするところは、沖縄のみならず世界中にある。
光るものや、生臭いものは魔除けとして、
古くから日本でも利用されてきた。
また、貝殻の形が女性器のように見えるのも、
魔除けとして利用される理由の一つであるだろう。
女性器を魔除けの力があるとするのも、沖縄だけではない。
古事記にもそのような話があるし、女性器信仰、
男性器信仰というのは、世界中のそれこそ何処にでもある。
沖縄だと例えば「ムーチーの由来」など、
それと伺えるような話はいくつもある。
女性器を露出することによって、邪気や悪霊を払うという、
現在の私たちの感覚からすると、ずれてるんだけれども、
(なんともうらやましい状況じゃないか!このやろう!)
女性器は、地上と黄泉の国をつなぐものであり、
魔除けの力を秘めているとして、崇められられていたのである。
(沖縄独特の墓、亀甲墓も女性器のデザインである。)
ちなみにスイジガイは、家のお守りだけではなく、
サンゴの天敵であるオニヒトデを食べることから、サンゴの守り神でもある。
魔除けその4「フーフダ」
さらには、屋敷の角や門の左右には、
「フーフダ」(符札)と呼ばれるお守りを取り付ける。
フーフダとは、簡単にいえば、お寺や神社が出す「お札」の1つだ。
神棚や仏壇に収めたり、門口などに掲げて災難除けとする。
お札には、神社がだす「神符」、お寺が出す「護符」とがあるが、それらは、
うちなーんちゅよりも、実際には本土の人のほうがよく知っているだろう。
(沖縄ではあまり神社やお寺になじみがないのである。)
ただし、沖縄のフーフダの珍しい点としては、
「木製」であるところである。
実は、日本各地の遺跡から、板に呪文を書いた札が、
数多く出土しているのだ。
つまりもともとは木製の札だったものが、紙の発明以降、
もっぱら紙の札が用いられるようになったのだ。
ところが、沖縄では現在においても、
紙製の札と同時に、木製のフーフダも利用されている。
画像:http://www.mugisha.net/
木製であるため、沖縄の札は、
屋外に打ち付けられているものも多い。
魔除けその5「ゲーン・サン」
沖縄では昔から、十字の形には、
魔除けの力があると信じられていて、魔除けとして、
ススキや桑の小枝、イトバショウの葉をひきさいたものを、
十字の形に結んだものが、用いられる。
こんな形!
その大きいものを「ゲーン」といい、
小さいものを「サン」と呼ぶ。
(単に「すすき」のことも、ゲーンと言うらしい)
例えば、料理などを戸外に持ち出すときには、
その上にサンを乗せて、邪気がつかないようにする。
悪霊が触れた食べ物は、傷んでしまうからだ。
そのため、人に食べ物をあげるときなどには、
この「サン」を入れて渡したりするわけ。
(若い人でする人は稀だが)
基本的にはススキで作るとされてはいるが、
何で作ってもいいようだ。
葉っぱに防腐作用があるからなのかなとも考えたこともあるが、
紙で作ったり(!)、ビニールで作ったり(!)、
簡易お守りとして、割りばしの入っている紙袋で作ったり
することもあるので、もしかするとあの十字の形に意味があるのかもしれない。
ゲーンは死霊の屋内への侵入を防いだり、場所を清めるためにも用いられる。
その他にも、霊に憑かれた人の背中をゲーンで叩き、除霊する時にも使われる。
またマブイグミで、遊離した魂を引き戻す際にもゲーンが使われる。
十字の形が魔除けになるというのは、西洋共通しているようだ。
あなたも、何か不吉な感じがした時には、
身近なもので十字を作ってみよう。
沖縄の神々はおおらかなのである!?
このように、うちなーんちゅは何重にもお守りを重ね、
悪霊が家に侵入してくることを、何よりも嫌がるのだ。
これら以外にも、「マース(塩)」や「ヒジャイナー(左縄・しめ縄)」、
「カマドの灰」や「ニンニク」なども使われるのだから、
うちなーんちゅのヤナカジ侵入防止策は厳重だ。
さて、このように幾重にもバリアを張っているにも関わらず、
なんかおかしなことになった場合、うちなーんちゅは、
最終的にユタに頼ることになるのである…
それにしてもだ。
家のあちこちに貝がぶら下がっていて
怪しいお札やサンの並ぶ、ニンニク臭い家なんて、
事情を知らない本土の人からすると、
かなり近寄りがたい不気味な雰囲気なのではないか?
…ん?まてよ。それが狙いか?
悪霊だけならず、人間の侵入をも阻む。
セコムいらずなシステムなのか?
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