ダルマザメ|丸い傷あとを残す殺さないヒットマン

 

 あなたは目にしたことがあるだろうか?マグロやメカジキなどで見かけることの多い丸い傷あと。まるでスプーンでくり抜いたかのように、肉がえぐられているのだ。

 

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 このような傷のある魚は料理する際に利用し辛いし、歩留まりも悪くなる。そして、傷が回復していたとしても、その部分の肉は白っぽく固くなっており、例えばマグロならば、刺身には使えないのだ。なので、当然このような傷のある魚は、市場価値も下がる。

 (ただし、この傷のあるマグロはおいしいマグロの印だという人もいる。おいしいからこそ狙われたのだと。そして、新しい傷のあるマグロは血抜きをしたようなもので、身の状態がいいという人もいる。)

 以前、魚屋の人に、「その穴はイカに食いつかれた痕だ」って聞いたことがあったので、最近までずっと、そう信じ込んでました。私。

ダルマザメに噛まれた痕(治りかけ)これはマグロのダルマザメに噛まれた部分。治っているように見えるが…

ダルマザメに噛まれた傷あとは、治っても使えないしかしその部分は白っぽく、固くなっていて刺身には使えない。

 

しかしこの丸い傷あとは、実はイカではなく、「サメ」の仕業だったのだ。

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サメがどうやってあの丸い穴をあけることができるんだ?だってサメって、こんな歯だぜ?しかも穴は小さいぞ。

 
…そんな疑問を持つ方も多いだろう。

 
それでは、マグロらに丸い傷あとをつける真犯人をご紹介しよう。それは、日本名「ダルマザメ」という体長30~50センチ程度の小さなサメ。

ダルマザメに食いちぎられた痕は、まるでクッキーの型でくり抜いたようにきれいな円になっているため、Cookie-cutter shark(クッキーカッター シャーク)という英名も持つ。

ダルマザメはこんな姿をしている。一見、サメにさえ見えない。

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 以前は体型が葉巻に似ているということで、「葉巻ザメ(cigar shark)」とも呼ばれていた。それが1971年に、あの丸い傷あとがダルマザメの仕業だということが分かってからは、「Cookie-cutter shark(クッキーカッター シャーク)」と呼ばれるようになったのだ。

 商品価値を下げることにもなる「あの穴」の原因について、漁業関係者や研究者を長年悩ませていた。ダルマザメの仕業と判明したのは、わりと最近のことなのである。それ以前までは、寄生虫によるもの、あるいはバクテリア等の感染病によるもの…などといった見解さえあったのだ。
 


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 口も小さくて、かわいい顔してるじゃないか…と思ってたら…
 
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 実は「口」はここだった。

 いきなり怖さ倍増。
 
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 下から見ると……

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 怖っ!!

 恐ろしい歯をしておりますな。

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 このノコギリ状の歯で獲物の肉塊を切り取るのである。

 

ダルマザメが泳いでいる姿を捉えた貴重な動画がこちら!

 ダルマザメの目が、光を反射して光って見えますね。沖縄の糸満の海人(うみんちゅ)は、ダルマザメのことを「ミーヒカヤーグヮ」と呼ぶそうです。※「ミー(目)、ヒカヤー(光るやつ)」の意。

 釣り上げたマグロにダルマザメが近づいて捕食していくのだが、その際に集魚灯の灯りでダルマザメの目がオオカミの目のように不気味に光るところから、そう呼ばれるようになったそうだ。

 ダルマザメに狙われるのは、マグロやメカジキだけじゃない。サメやイルカ、マンボウ、クジラをはじめ、トドやアザラシなどの海獣類、マンタやウミガメ等にいたるまで、ダルマザメによる食害を受けている。

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シーラ(ダルマザメに噛まれた痕のある)

イカなどを常食とするが、自分よりはるかに大きい動物をも攻撃し、生きたまま体表の一部の肉を削り取って食べるという特異な生態を持つ。すなわち獲物の体表に噛み付き、体を回転させることで肉塊を食いちぎると、まるでディッシャーで掬い取ったようにきれいな半球形に窪んだ傷跡ができる。これを可能にしているのは、ダルマザメの口の強い吸引力と下顎の鋭いのこぎりのような形状の歯列である
引用元:wiki

 
 ダルマザメは自分よりもはるかに大きな獲物に食いつく。

 実はダルマザメが襲うのは生き物だけでない。なんと潜水艦や海底ケーブルなどにも食いついて被害を及ぼしたこともあるのだ。…なんというか、もうここまでくると、アホというか、ドンキホーテ的な狂気さえ感じるな。「でかければいい」みたいな(笑)。

 ダルマザメによって米軍の潜水艦のソナードームのゴムカバーに穴が開けられた時には、冷戦時代だったので、長い間米軍はソ連のスパイの仕業だと考えていたらしい。

 しかし、ダルマザメが犯人であるということが分かって、米海軍は驚くとともにショックだっただろう。何故なら当時最新鋭の潜水艦が、たった50センチのサメにやられてしまったわけだからね。
 

 さて、さまざまな獲物の肉を切り取るダルマザメの歯はこのようになっている。

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 こんな歯に噛みつかれたら痛いだろうなぁ…

 上の歯を獲物の体に突き刺し、そこを支点として回転することで、下の歯で肉を切り裂くのである。

 ただ、ダルマザメは筋力は優れていないという。なので、自力で回転し肉塊を食いちぎっているとは考えにくい。

 
 それならば、どのようにして獲物に食いついた後、体を回転させるというのか…

 実は、誰も知らないのである。

 捕食しているのを目撃した人も非常に少ない上に、ほんの一瞬であるために、どのようにしてダルマザメが獲物に食いつき、肉塊を食いちぎっているのかということは、現在のところ想像するしかないのだ。

 それでは、ダルマザメが本当にあの丸い傷あとをつけているのか、どうやって証明できるのか?それは、ダルマザメの消化器の中から、丸い肉片が見つかることと、傷あととダルマザメの歯型が一致するからだ。
 

 次の動画の2分5秒あたりに、マグロにダルマザメが食いつく瞬間が映っている。画質が良くないのと、一瞬の出来事なので分かり辛いが、貴重な映像である。

 ダルマザメが食いついた瞬間、驚いた獲物が逃げよう&振り払おうとする動きによって、水の流れの抵抗によりダルマザメの体が海中で回転することになるのではないかと言われている。つまり、相手の力を利用して回転しているというのである。

  

 ダルマザメがどのようにして大型で遊泳性の高い動物を捕食しているのかについても、いまだに不明である。ダルマザメの泳ぐスピードは速くないため、獲物を追い回して捕食するとは考えにくい。今主流となる考えとしては、ダルマザメが獲物を「待伏せ」しているというものだ。

 ダルマザメは腹の部分に発光器をもつ。発光器の機能や目的についても不明なのだが、この光を利用して獲物をおびき寄せているということは、十分に考えられる。

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 それにしても、近づいてきたマグロなどに噛みつけるということは、瞬間的には、素早く泳ぐことができるのだろうか。
 

 ダルマザメは大型動物を攻撃しても致命傷を与えるには至らない。なので、餌の枯渇を招く心配もなく、餌の少ない深海という環境に適した捕食方法だという人もいる。 

 しかしダルマザメは群れるようだ。ダルマザメに集中攻撃されれば、死ぬこともあるのではないか?環境に適した捕食方法を選んだというよりも、単にダルマザメ自体が小さいため、物理的にそうなんだろう。

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 あいたたたたた…
 悲惨である。

 実際にうちあげられるイルカやクジラなどには、かなりの確率でダルマザメに噛まれた痕が残されている。ダルマザメに噛まれてパニックに陥り、浅瀬に逃げ込んで戻れなくなるというケースも考えられる。

  

 …もしも、人間が襲われたらと思うと怖いよね?実は実際にダルマザメが人間も襲ったこともあるのだ。

cookiecutter-4-thumb-570x285-122593画像元:http://www.theatlantic.com/technology/archive/2013/05/the-most-terrifying-description-of-ocean-swimming-ive-ever-read/276240/

 ダルマザメは外洋に生息するので、海水浴するような場所では危険はないとされる。深海魚が海岸にうちあげられることもあるわけだから、出会う可能性はないともいえないが、それはハブクラゲなどに被害を受けるよりもずっと低い確率だ。

 まだまだ謎だらけのダルマザメ。興味はつきないが、海の中では出会いたくないものである。
 

 獲物をおびき寄せ、一瞬で噛みつき、相手の力を利用して肉を食いちぎる。相手は死なないから、また食える…いるなぁ。人間にも、こういうやつが。


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やま

沖縄在住40代うちなーんちゅです。沖縄や食べ物に関する話題が多くなると思います。不定期更新ですが、ゆたしく!

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