アンボイナガイ 危険な貝
沖縄の綺麗な海には、人の命を奪うことさえある危険生物がいる。イモガイもそのうちのひとつだ。その中でも気を付けたいのは、「アンボイナガイ」と「タガヤサンミナシガイ」。
タガヤサンミナシガイ これも危険なイモガイ
イモガイの貝殻の模様は、実に多彩で美しい。だから、イモガイだけを集めるという貝の収集家もいるほどなのだ。しかし、イモガイ類はコノトキシンという危険な神経毒を持つ。イモガイはこの毒で獲物を動けなくし、そして丸呑みするのだ。その驚きの捕食の様子を動画で見てみよう。
イモガイの毒は人間も殺せるほどの強さ。美しい貝に触れた途端、口の中にある毒針にさされるという被害も多い。これまで30人あまりがアンボイナガイに刺されて死亡しているという。しかし、原因のわからない水難事故の中にも、このアンボイナガイによって死亡したと推測されるものも多く、実際の被害者数はもっと多いだろう。
「美しいものには毒がある」というのは、イモガイにも当てはまるのである。
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刺されても痛みがないという恐ろしさ
イモガイ類の中でも最大種である「アンボイナガイ」は、イモガイの中でも、特に死者や重症者が多いことで知られる。沖縄ではその毒の強さから、毒蛇「ハブ」を冠して「ハブガイ」とも称して恐れられているが、アンボイナガイの毒は、なんとインドコブラの約40倍もの強さだという。さらに恐ろしいことに、その毒には血清がないのである。
刺されても痛みはないし、腫れもしない。しかし刺されてから30分後くらいには、腫れてきた患部からしびれが広がり、手足や口にしびれがくるという。また、吐き気やめまい、胸の痛み、眩暈、物が二重に見える複視などが起こり、徐々に全身の運動神経がマヒして重篤となる。そしてついには、呼吸麻痺をおこし死に至るのである。刺されてしまったら、ただちに医療機関にむかわなければならない。
しかし血清もないので、病院でも抗毒治療は行えない。ただ被害者の体内から毒が抜けきるまで待つしかないのである。できることといえば、血圧をあげたり、人工呼吸を施すなどの対症療法しかない。
イモガイの毒への応急処置
応急処置としては、刺された箇所より心臓に近いところを縛り、毒を吸い出すということくらいだろう。もしも刺された部分に歯舌歯(しぜつし)が残っていたら、早急に取り除かなければならない。受そして、傷部位の心臓側を三十分緊縛すれば、不思議と毒性が弱まるという報告があるから覚えておきたい。また、全身の運動神経がマヒしてしまうので、刺されたと思ったら、まずは周りに助けを求めたい。
※歯舌歯:イモガイは毒矢の形をした「歯舌歯(しぜつし)」なるものを持つ。小魚などが接近すると、歯舌歯を伸ばして刺して、毒で動けなくしてしまう。この歯舌歯はなんと体長の2倍近くも伸びるというから驚きだ。さらに、やっかいなことに、アンボイナガイの歯舌歯はウエットスーツをも貫通してしまうのだ。ハブクラゲの触手はウェットスーツを通さないので、ウエットスーツを着ることで被害を予防することができるが、アンボイナガイの歯舌歯を防ぐことはできないのである。
イモガイの見分け方
アンボイナガイは世界中の暖流海域に生息している。日本では、特に沖縄のサンゴ礁地帯に多く生息している。浅瀬にもいるので、磯遊びや海水浴の際にも注意が必要なのである。刺されないようにするには、素手でさわらないことが大事だが、夜行性なのでとくに夜は注意が必要だ。イモガイの多くは毒を持っている。素人には、猛毒のイモガイと弱毒のイモガイとの区別が難しいと思うので、イモガイ類には触らないようにするほうが無難だろう。
イモガイの外見上の特徴としては
- 円錐形(英語ではイモガイのことを「cone shell(円錐形の貝)」と呼びます。)
- 殻が里芋のイモの形(だから和名がイモガイ)
貝殻の色彩や柄が美しく、円錐型。
イモガイとマガキガイの見分け方
沖縄で食べられている「てぃらじゃー(マガキガイ)」というおいしい貝(無毒)は、イモガイとの区別が難しいかもしれない。だから、わからなかったら触れない。この慎重さが命を救うかもしれんです。しかしどうしてもティラジャーを取って食べたいんです!なんて人もいるかもしれません。なので、その見分け方をお教えします。「てぃらじゃー」とイモガイの違いは、殻口外唇の形。
この写真右の貝が「ティラジャー(マガキガイ)」。赤丸の殻口外唇の形を見てほしい。マガキガイは、この画像のように殻口外唇が凹んで外側にめくれているのだ。(マガキガイはこの殻口外唇の凹んだ部分から、触角や眼を伸ばす)しかしアンボイナガイをはじめとするイモガイには、殻口外唇に凹みはない。
アンボイナガイ
このように殻口外唇が、まっすぐなのだ。
ただし、もう一度書きますが、ティラジャーと間違えてアンボイナガイに刺されるというケースも少なくないことを忘れないように。
ちなみに沖縄で「イザリ」と呼ばれる絶好の潮干狩りのチャンスがある。「イザリ」とは大潮の干潮が夜にあたったときのこと。イザリ時には、潮干狩りの収穫がとくに多いと言われていますが、アンボイナガイも夜行性なので注意が必要です。
まとめ
貝には手を触れないことがアンボイナガイをはじめとするイモガイの被害を食い止める、最善の予防となります。不用意に貝を採取しないほうがいいんです。もしも、するのなら毒のある貝の見分け方や応急処置法を理解し、必ず誰かと一緒にいるということです。
沖縄では、アンボイナガイのことを「ハマナカー」と呼びます。これは、刺されると岸までたどり着けない(浜の真ん中で死んでしまう)ということに由来しているのです。ですから、海では必ず誰かとともに行動するということが、何かあった時に命を救うことになり得るのです。
アンボイナガイに刺されても、痛みがないということが被害を致命的にしています。まさか自分が…なんて考えずに、刺されたかも…と思ったら、海からすぐに上がり人がいるところに向かいましょう。
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貝のコレクターをしている者です。
画像1枚目の貝はトウコオロギガイであり、アンボイナを含むイモガイ科ではありません。
『アンボイナ』で画像検索した際に一番初めに出てくるのがこちらのサイトであり、多数の誤解を生む可能性がありますので、画像の変更をお願いします。
ぷりもう さんコメントありがとうございます。
申し訳ありませんでした。
この画像は画像素材サイトで購入したんですが、
アンボイナガイと表記されていたので、
疑うこともなく利用してしまいました。
確かに、全然違いますね。
お恥ずかしい限りです。
ありがとうございます。