沖縄で正月などの祝い料理としても、法事料理としても
なじみの深い汁物料理に「中身汁」がある。
(といっても、食堂でも食べられるんだけどね。)
「中身」とは豚の「モツ」、つまり豚の内臓のことで、
内地では「白もつ」と呼ばれる部分だ。
豚の大腸や小腸、胃、乾燥椎茸やこんにゃくなどを
具としたおつゆが「中身汁」だ。※「中味汁」と書くことも多い。
「中身汁」は、カツオ節と豚と、乾燥シイタケから出るダシの三重奏で、
あっさりしているのに実に滋味深い「すまし汁」なのだ。
豚のモツを使った汁と聞くと、ちょっと抵抗を感じる人も
いるかもしれないが、ぜひ騙されたと思って飲んで欲しい。
全く臭みはなく、薬味のおろし生姜で上品な仕上がりに驚くことだろう。
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中身の臭みのとり方|沖縄のおばーのやり方
中身汁は、私なんぞは毎日飲んでもいいほど
大好きなんだけれど、実は作るのが大変。
一番難儀なのが、内臓の掃除である。
この下処理をきちんとやったかどうかで、
仕上がりが決まるといってもいい。
きれいに洗わなければ、内臓は内臓。やはり臭いのである。
実は、この内臓の洗い方には、いろいろな方法がある。
おばー達がよくやっている方法は、
小麦粉や塩を豚のモツにこすり付けるようにして洗う方法だ。
小麦粉は、換気扇など油汚れのひどいところの
掃除にも使えるくらいなので、豚の内臓の脂や臭みを
汚れとともに吸着して落としてくれるのだ。
塩もまた、汚れとともに「ぬめり」も落としてくれる。
中には、小麦粉で洗う時に、油を足して洗う人もいる。
ちょっと、私にはその理屈がわからないのだが、
何人かそうやっている人がいたので、私も真似ていた。
(ただ、油と小麦粉で洗うと洗い流すのが結構大変なことに
なります。なので、最近は小麦粉と塩だけでやっとります。)
他には、酢をかけて洗う人もいる。
酢の漂白作用がいいのかもしれない。
内臓の臭みは、牛乳につけても消すことができるけど、
沖縄のおばー達がやっているのは見たことがないなぁ。
さて、汚れを小麦粉に吸着させたら、ぬるま湯で洗い落とす。
これを何度か繰り返すのだ。
洗い終わったら、鍋にお湯を沸かし、中身を入れて
水が白く濁るくらい煮込み、茹でこぼすこと2、3回。
中身が柔らかくなって、豚かじゃー(豚のくさみ)がなくなるまで繰り返す。
(茹でこぼす前に、フライパンで焼く人もいた。)
中身を煮る際に、月桃の葉を一緒に入れて煮ることで、
臭みをとる人もいるらしいが、これは試したことないな。
中身に限らず、豚肉を下ゆでするときには、
おからや米のとぎ汁を入れる人もいるね。
これは、和食の方法だけれども、沖縄の場合は、
やはり泡盛を入れることが多いな。
泡盛を入れて、豚肉を煮ると、
柔らかくもなるし、臭いも減るんだ。
さて、汁が濁らなくなり臭くなくなれば、
中身の下ごしらえは終わり。
ここまでやったら、炒め物でもなんにでも
すぐ使えるので便利だ。冷凍保存もできるので、
時間があるときにまとめて下処理するのもおすすめだ。
そしたらば、全ての材料の大きさを切りそろえておく。
(5センチ×1センチ程度。)
「いなむどぅち」なんかにもコンニャクを使うので、
沖縄のスーパ―には、専用にカットされたコンニャクが並んでいる。
ちなみに、豚の内臓は下処理も大切だけど、
それよりも大切なのは、新鮮なものを使うこと。
新鮮でなければ、どれだけ下処理を
丁寧にしても、臭みは取れないのだ。
※ただし、現在は下処理済みの茹でられた中身も売られている。
まったく便利な世の中になったもんだ。しかし、簡単に作れるようになると、
有難みも薄れるかもしれんなぁ。下処理済みの中身を使う場合も、
一度は茹でこぼすことをお勧めするぞ。
さあ絶品中身汁を仕上げるぞ!
カツオ出汁の中に、下ごしらえした中身と
切りそろえた乾燥シイタケ(戻し汁も入れよう)、
コンニャク、カステラかまぼこなどを入れて煮込み、
塩で味付け(少量の醤油も可)。
薬味は青ネギの小口と、おろし生姜。
うまーっ!!
汁を作るときには、出てくるアクをキレイに取り除いてね。
さあどうだ、洗練された上品な味付けの一品!
作り立てもいいが、翌日もまたうまいぞ!!
中身汁に、沖縄そばの麺をいれて、中味そばにしてもうまいしね。
中身汁にとろみをつけて、チャーハンにかければ、
沖縄風の中身あんかけチャーハンの出来上がりだ!!
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