イラブチャー…
初めて耳にする人にとっては、
それが、何を意味するのか、
ちんぷんかんぷんかもしれない。
イラブチャーとは、沖縄の魚の名前だ。
イラブチとも呼んだりするが、
どっちにしろ、魚の名前だとは思わないだろう。
特徴的なのは、なんといってもその色だ!
沖縄の海を連想させる、鮮やかな青い色の他にも、
緑や赤、黒や白などカラフルな色のものが存在する。
例えば、公設市場の魚屋で、
このイラブチャーが、売られていると、
「うわー!青い!!」
「すごーい!」
「キレイ!」
「あ!これ美ら海水族館で泳いでいた魚だ!!」
「え~!食べられるの?」
なんて観光客の声が、聞こえてくる。
ね?見るからに、
熱帯の海の魚ってかんじでしょ?
人間は「青いもの」には、
なかなか食欲がわかないものだと聞いたことがある。
しかし、沖縄に来る観光客には、
イラブチャーは、受けがいい。
カラフルな沖縄の魚たちが並ぶ中でも、
イラブチャーは、断トツ注目を集める魚なのだ。
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イラブチャーは白身魚
イラブチャーは、皮は青いけれども、
身は白身の魚だ。
刺身でももちろん食べることができるが、
沖縄では、昔から酢味噌和えや、
マース煮にして食べられることが多かった。
ちなみに、沖縄では刺身を食べるときには、
醤油に「シークァーサー」を絞って加えたり、
コレーグースを混ぜたり、
島唐辛子をつぶし入れたりする人もいる。
これは、脂ののりが弱く、
身の締りの弱い沖縄の魚を、
おいしく食べる工夫のひとつなのだろう。
そしてまた、中らないようにするための
先人の知恵のひとつなのだろう。
イラブチャーを刺身にするときには皮を付けて!
イラブチャーは、皮目の色を楽しみたいので、
皮を湯引きして、
皮ごと刺身にすることが多い。
(焼き霜にする人も。)
しかし、皮には、クセがあるので、
若干食べにくいかもしれない。
私が、自分で食べるのならば、皮をとる。
新鮮ならばまだいいのだが、
鮮度が落ちると、クセは強くなる。
煮つけやから揚げ、マース煮などなど、
味が淡白なので、それこそどんな料理にでも合うのだが、
正直、そこまでおいしい魚でもないと、私は思う。
イラブチャーは、
高い魚ではない。
それは、地元の人間には、
それほど売れていないからだろう。
他の魚が高くて、
イラブチャーが安ければ、
買うくらいじゃないかな。
(もちろん、好きな人もいますけど)
出されれば抵抗なく食べることはできる。
しかし、わざわざ買って食べるという人も、
今の若い世代には、少ないような気がする。
だって、今じゃおいしくて安い
内地の魚が手に入るんですもの。
その証拠というわけでもないが、
実際に地元スーパーの鮮魚コーナーには、
イラブチャーが並んでいないことも多い。
しかし一方、観光客向けの居酒屋や、ホテルなどでは、
だいたいイラブチャーの料理があるはずだ。
これは、イラブチャーが、
観光客からの反応がいいというのが、
一番の理由なんだろう。
おいしいイラブチャー
イラブチャーは、和名でいうところの、
「ブダイ」科の魚の、沖縄での総称である。
一口にイラブチャーと言っても、
「ゲンナー」だとか、「アーガイ」とかいろいろな種類が存在する。
また、オスとメスでも呼び方の変わるものもある。
一説には80以上もの種類がいるという。
ちなみに、イラブチャーの中ではアーガイが一番おいしいとされる。
そのため、アーガイは少し値が張る。
アーガイ(和名:ヒブダイ)
イラブチャーはブダイの仲間
観光客相手の魚屋だったり、居酒屋に並べられている
イラブチャーに、「アオブダイ」と書かれているのを見て、
「へー、タイの仲間なんだ!」
なんてことを言っている観光客が、たまにいるが、
イラブチャーはタイではなくて、「ブダイ」の仲間である。
ブダイは漢字で書くと「武鯛」。
一説によると、ブダイの鱗はものすごく大きいのだが、
それが、まるで鎧を着ているようだから、「武」の字を
当てたという。
イラブチャーの毒性の話
ブダイの仲間に、「アオブダイ」がいるが、
アオブダイは、沖縄など熱帯の魚かと思いきや、
実は広範囲に生息しているようで、東京湾などにもいるようだ。
ブダイは浅い海の岩礁や、サンゴ礁付近に生息する。
藻やカニ・エビなどの甲殻類、貝類など様々なものを食べる雑食性だ。
そのため、毒性を持つものを餌として食べることもあり、
ブダイの内臓を食べることで、「あたる」こともある。
実際に、本土ではアオブダイの内臓を食べて、
食中毒を起こした事例も多い。
そして、死亡するケースもある。
ほとんどの場合、アオブダイの肝臓に毒はあるのだが、
稀に身の部位にも存在することもあるようだ。
アオブダイに含まれる毒物は、「パリトキシン」だとみられているが、
この毒物は、加熱や水洗いでは除去できないため、
予防法としては、アオブダイを食べないということになる。
さらに、このパリトキシンは、
フグの毒よりもはるかに強いとされているのだ!
…じゃ、じゃあ、
イラブチャーも食べたら危ないんじゃ??
なんてことを思う人も多いだろう。
実は、沖縄県内でイラブチャーと呼ばれ、流通しているブダイは、
ブダイ科アオブダイ属のナンヨウブダイやヒブダイなどで、
本土で毒性が問題となっているアオブダイとは、種類が違うのだ。
また、「あたる」と言われている魚でも、
生息地域によっては、あたることなく食べることが出来るものもある。
そういった魚は、主に、生息している地域での
食べている餌に問題があったりするのだ。
例えば、沖縄でナガジューミーバイと呼ばれる魚は、
食べると、シガテラ毒にあたるとされている魚だが、
獲れる地域によっては、シガテラ毒を持たないものもいる。
沖縄県内では、イラブチャーの刺身で「あたった」という話も聞かないので、
沖縄で流通されている、イラブチャーは安全であると思うし、
沖縄の県漁連も以前、そのような見解を発表している。
アオブダイ「属」であるため、スーパーや魚屋では、
イラブチャーのことを、アオブダイと表示しているところも多いのだが、
勘違いする人もいるかもしれないので、表記を変えた方がいい気もする。
イラブチャーは、「イラブチャー」と表記した方がいいのではないか。
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アオブダイの見分け方
意外と、アオブダイと他のブダイとの見分け方が難しかったりする。
その見分け方として、簡単なのは、
尾びれの上下が、長く伸びているか伸びていないかということだろう。
長くなっていれば、アオブダイではない。
イラブチャーの内臓は食べない方がいいかも…
沖縄の「イラブチャー」は、安心して食べることが出来る魚だ。
しかし、念のため内臓を食べるのは避けていた方がいいかもしれない。
毒は、肝臓などの内臓にたまるからだ。
種類は違うとはいえ、同じブダイの仲間であり、
食べるものも似ているのだから、
毒性のある餌を食べないとも限らない。
沖縄の離島の人たち、(私が知る限りでは)
特に宮古八重山の方は、イラブチャーが好きな人が多いように思う。
魚屋で「イラブチャーの頭」を買うのは、
宮古の年配の方たちが多かったからだ。
個人的に、イラブチャーの身は全然普通に食べれるのだが、
イラブチャーの頭やアラは、苦手だ。
特に、イラブチャーの頭やアラで出汁をとった、
汁ものなんて、食べ慣れない私には、臭いのだ。
ゲンナー・イラブチャーの名前の由来は、
額に、ゲンナー(げんのう)で叩かれたようなコブがあるからだが、
そのコブを、煮つけなどにするとおいしいという人もいる。
写真のゲンナーは、メスだが、
ゲンナーのオスは、さらにコブが大きくなる。
ちなみに、コブは、「ぷにゅぷにゅ」していて、
コラーゲンの塊のようなものだ。
イラブチャーを食べなれた、宮古八重山人たちは、
好んで、イラブチャーの頭やアラを買う人も多い。
それどころか、
イラブチャーの肝を使って、「肝和え」にして、食べたりする。
作り方もいろいろあるが、
肝を乾煎りして、酢味噌と混ぜ、
イラブチャーの刺身を和える方法もうまい。
新鮮な肝は、臭みが少ない。
(ただし、ちょっと鮮度が落ちると、すぐに臭くなる)
念のため、肝臓は食べない方がいいかもしれないが、
肝和えで食べられているということは、
沖縄のイラブチャーは「肝」を食べても、
大丈夫だという証拠には、なるかもしれない。
酢さえも自分達で作っていた!!昔の人たち!
ちなみに、肝和えや酢味噌和えにする時に使う「酢」だが、
なかなか手に入らなかった時代の人たちは、自分で作っていたそうなのだ!!
魚屋のおばあの話によると、
芋を焚いた水を、一升瓶にいれておき、
それを腐らせて、「酢」をつくったそう。
しかも、この手づくりの酢は、
かえって、今売られている酢なんかより、
ずっとおいしかったらしいのだ!
う~ん、こんなことを聞くと、
ぜひ、手作りの酢も味見してみたいものだ…
しかし、「肝和え」もそうだが、
この手づくりの酢も、自分で作ろうと思えば、作れるのだが、
一人で作って一人で味見するには、勇気がいるんだよなぁ。
イラブチャーのおすすめの食べ方!まとめ
イラブチャーを美味しく食べるためには、
一番肝心なのは、新鮮なものを選ぶことだ。
新鮮な、例えば釣りたてのものなんかだと、
肝和えにしても、全然臭くなくうまいのだ!
しかし、そのように新鮮なものは、なかなか
魚屋やスーパーには、並ばないが。
イラブチャーは、観光客相手に出す料理の場合は、
皮を取らずに、皮目の色を見せて料理することが多いが、
個人的には、皮を取った方が、クセも少なくなると思う。
また、同じ理由で、揚げる料理がいいんじゃないかなと思う。
そして、あんかけや、チリソースみたいな料理だと、
クセは全く気にならない。
生で食べる場合にも、マリネやドレッシング、あるいは、
昔から沖縄で食べられている酢味噌和えなんかが、
クセを上手にカバーしてくれるんじゃないかな?
イラブチャー自体は、それほど高いわけではないので、
料理を工夫すれば、おいしい節約料理を作ることもできるだろう。
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