ここは那覇市安里にある「栄町ボトルネック」という飲み屋。
ディープな場所にあるのにもかかわらず、観光客もちらほら訪れるという人気のお店。沖縄観光初心者は訪れることはまずありませんが(笑)
さて、この「栄町ボトルネック」は、じつはおいしい沖縄そばが食べられるのです。シンプルですが、〆にぴったりの沖縄そばです。
最近「沖縄そば」にはまった小林さん。
小林さんは年に何度も沖縄を訪れます。
今までは、沖縄そばは単なる食事メニューのひとつにすぎなかったものの、食べているうちに、沖縄そばの奥深さに目覚めた様子ですよ。今夜はボトルネックの沖縄そばの噂を聞きつけて、こんなディープなお店に女性ひとりでやってきたのです。
カウンター隣で一人飲んでいたyamaが、馴れ馴れしく話かけてきましたよ。yamaは、栄町ボトルネックの常連さんです。飲んだくれです。
首里そば
首里そばの麺は、かん水を使って手打ちされている。茹でおきタイプ。首里そばは麺が固いと言われる。それは、たぶん強力粉だけを使っているか、強力粉を多く配分させているのかもしれない。また、首里そばでは、機械ではなく人力で生地を練る。機械よりも、人力の方が力を加える方向を変えやすいため、コシが強くなると言われているので、そういったところが首里そばの麺のあの固さにつながっているのかもしれない。
自称「沖縄そば通」のyamaは、得意げです。
…沖縄そばのルーツは、「支那そば」なんだ。だから「そば」って呼んでいるんだと思うよ。「支那そば」だって、蕎麦粉使ってないけど「そば」って呼ぶでしょ?
本土出身者が連れてきた中国人コックが、
那覇の辻遊廓近くに開いた支那そば屋が、
今日の沖縄そばの直接のルーツであると考えられている。したがって本土のラーメンと沖縄そばは、
先祖を同じくする兄弟のような関係にあると言える。
引用:ウィキペディア
でもさ、実際食べると「ラーメン」とは全く違うんだよなぁ。
カツオだしを使っているってことと、味付けには塩がメインに使われているってこと、脂を取るってことが、ラーメンとは違うスープに仕上がる理由だと思うよ。
小林さんの注文した沖縄そばが届きました。栄町ボトルネックの沖縄そばは、そば出汁は「やかん」に入って出てきます。自分でそれを注いで食べるのです。ちなみに、出汁は飲み放題。
うまいでしょ!ボトルネックの沖縄そばは出汁がうまいんだよねぇ。すっきりとしているけど、旨みが強い。カツオや豚はもちろん、鶏や煮干しなども使って丁寧に出汁を取っているんだ。その美味い出汁が、この細い麺と最高に合うんだよなぁ。
麺の違いはその太さだけじゃないんだ。
- 丸麺か平麺か
- 縮れているかストレートか
- 細いか太いか
使っている小麦粉によって麺の色も違えば、モズクやゴーヤーを麺に練りこむなどといった「変わり麺」も存在するんだよ。
ああ、それはね、一番の理由としては、麺の保存方法にあるんだよ。
そうそう。沖縄そばのあの麺の独特な食感は、麺の保存方法と提供方法によって出来上がるんだ。
沖縄そばの麺の食感を大きく分けると…
- ラーメンみたいなツルツルもちもち麺
- ゴワゴワ固く、噛むとぶちっとちぎれる麺
の2つがある。これらの違いは、生麺タイプか、従来の沖縄そばのタイプかってことなんだ。
(笑)確かに!だけど、このタイプの麺が沖縄そば本来のものなんだよ。小林さんの好きだっていう「首里そば」の麺もこのタイプさー。
麺の保存方法・提供方法に関してはね。
「ラーメンみたいなツルツルモチモチとした麺」も、
「ゴワゴワ固く、噛むとぶちっとちぎれる麺」も、
使う材料には変わりはないんだよ。
ま、使っている小麦粉の種類や産地にこだわっているところもあるけどね。
そう。保存方法が違う。ラーメンなんかだと、生麺を注文が来てから茹でるよね?
伝統的な沖縄そばの麺は、注文が来てから麺を茹でるんじゃないんだ。麺を作ったら、先茹でしておくんだよ。
沖縄そば屋なら、営業前に先に麺を茹であげておくわけさー。
そう。先に麺は茹でちゃうんだよ。茹でたら、油をまぶす。
あ、油をまぶす!?
そう。油をまぶしたら、自然冷却する。扇風機の風なんか当ててね。
し、自然冷却!?水で締めるとかじゃなく?
打ち終わった沖縄そばの麺は、そういう工程を経て保存されるわけ。で、注文がきたら、油落としと麺を温める意味で一度お湯でゆがき、沖縄そば出汁を注いで完成というわけ。
なんか、私の麺に対する常識が崩れ去りました…
対して、「ラーメンみたいなツルツルモチモチとした麺」は、「生めん」タイプ。注文を受けてから、麺を茹でるという、ラーメンと一緒の方法。
最近この自家製生麺を「売り」としている、沖縄そば屋も増えたよねー。
でも、なんで、先茹でして油をまぶすなんてことをするんですか?
これは、冷蔵庫などの設備がない時代に、ものを長持ちさせるための工夫だったんだよ。
へー!それがあの沖縄そばの麺の独特の食感につながるんだぁ。
そう。油が麺の表面からしみ込んで、固くなるんだな。そして、油を麺にまぶす際に、手で麺をこすり合わせるんだけど、この時にあの麺の「縮れ」ができるというわけなんだよ。
まあ、現在は冷蔵設備も整っているからね。わざわざその工程を踏まずとも、麺を保存することが可能になった。なので、その工程を省いた生めんタイプで提供する沖縄そば屋も増えているんだよね。実際美味しいしね。
「てだこそば」とかの麺が、そのタイプですか?
そうそう。今は、手打ち生めんタイプの人気店も多いよね。ただ一昔前は、昔ながらの沖縄そばの麺とはあまりにも食感が違うので、このタイプの麺を使った「沖縄そば」が果たして「沖縄そば」といえるのかどうか、疑問を持つ人も多かったよね。もうこのタイプは浸透しているから、そう思う人も減ったと思うけど。
スポンサードリンク
[ad#co-3]
そういえば、沖縄そば屋でよく「木灰(もっかい)そば」っていう文字見かけるんですけど、それってなんなんですか?
「木灰」っていうのは、読んで字のごとく木の灰のことだよね。沖縄そばの麺は、小麦粉と塩とかん水を材料とする。卵を入れるところもあるみたいだけどね。ま、それはおいといて、「かん水」だな。「かん水」って「つなぎ」の役割をするわけさー。で、この「かん水」の代わりに沖縄では「木灰」が使われたわけさ。
え、木の灰を麺に練りこんでいるってことですか??
いや、そうじゃなくてね、木の灰を水に入れておいて、しばらくすると沈む。そしたらその水の上澄み液を使うというわけなんだ。
へー。
つまりね、昔は「かん水」が手に入りにくかったんだと思うよ。だから木灰の上澄み液をつなぎとして使ったんだろう。昔は、麺を茹でる際には、薪を使っていたから、木灰もタダで手に入るわけだしね。
ガスなどの設備が整うにしたがって、
薪を使うことの無くなった、戦後、
いい木灰が手に入ることも少なくなって、
暖簾を下げた、沖縄そば屋も多かったようだ。
ところが、新しい世代がオープンさせる、
沖縄そば屋には、手打ち麺を前面に出して売り出すところも多い。
ただし、「かんすい」を木灰のかわりに、
つなぎとして使い、手打ちするところがほとんどだ。
これでは、中華めんと全く変わらない。
…というか、実は沖縄そばは、
公正競争規約の上でも、分類は「中華麺」なのだ。
だから、「木灰」をつかったそばを出す店は、木灰を使って、麺を手打ちしてますよ!ということを、強くアピールしているわけさー。
じゃあ、木灰を使って手打ちした麺を、先茹で油まぶし、自然冷却したものが沖縄そば本来の麺ってことなんですね?
そうそう。
生めんタイプと、先茹で油まぶしタイプが麺の食感に大きな違いがでるのはわかったんですけど、木灰をつかったそばって、使ってないそばと違いがあるんですか?
そりゃああるさー。沖縄そばの麺に使われる木灰には、例えばデイゴとかガジュマルとか、イジュとか…向いているといわれる木がある。でね、使われる木の種類によっても麺の味や香りに違いはでるらしいよ。
……でも、正直な話。よっぽど舌の肥えた人じゃない限り、わからないよね。俺もわからんし。
ふふふ。じゃ、木灰と「かん水」だと、結構違いがわかるんですか?
いや、わかる気はする…
じっくり、そばダシを飲んだ後に、
舌の上に残る、
なんだかよくわからない味や香り…
それが、灰汁独特のものだったりする。
なんというか、言い方は悪いが、
俺の感覚では、カツオ出汁の先にある、
化学調味料のような味…
すごくまずそうなんですけど…(笑)
(笑)正直な話、かんすいを使おうが、木灰を使おうが、味や香りに大きな違いはないよね。味に関係するのは、小麦粉の種類や質が一番大きいだろうし、新鮮な小麦粉の打ちたて自家製麺なんかだと、はっきりと味は変わるよね。
だけど、実際どうなんだろう。沖縄そばは「だしくぇーむん」とも言われる。意味は「出汁を食べるもの」って意味なんだ。なんで、麺に個性が強すぎてもどうなんだろうって気はするけどね。
最近オープンする沖縄そば屋の出汁って、洗練されたものが多いんだよね。透き通っていて、上品な出汁だ。なんで、そういうスープには細い麺が合うと思うなぁ。
例えば、ここ栄町ボトルネックの沖縄そばの麺は「亀浜製麺所」の麺なんだけれど、細いよね。この麺とこの洗練されたそば出汁が合わさって、おいしいわけさ。たぶん、この出汁にぶっとい麺だと美味しさは半減すると思うな。
けっして太い麺が美味しくないってわけじゃなくて、あくまで出汁との兼ね合いだと思うんだよね。
あとは好み。例えば、沖縄本島の北部では固めの平麺、南部ではややコシのある中太縮れ麺、宮古地方はやや縮れた細麺、八重山では細いつるんとした丸麺…というような麺が伝統的に使われている。なので、育ったところで慣れ親しんだ麺がどうしても美味しいと思うんじゃないだろうか?
ただ、最近の那覇ではこの沖縄そばみたいに細めの麺が人気が高いらしいんだけどね。俺もこの「亀浜製麺所」の麺は好みだなぁ。美味しいよ。
スーパーでも、この麺は売っているんですか?
亀浜製麺所の麺は売っていないなぁ。製麺所に直接行けば、売ってくれるとは思うけど…あ、でも最近はこの麺に近い麺がスーパーに並んでるよ。
茹でるってどのくらい茹でればいいんですか?あ、でも油をまぶすって面倒くさそう…
いやいやいや、スーパーで売っている沖縄そばの麺は、その工程はしなくていいんだよ。もうそこまではやられているんだ。なんで、さっと湯通しして、麺をあたため、余分な油を流す程度でいいんだよ。
ま、最近は生めんタイプの沖縄そばの麺も売られているから、その場合は袋の表示通りに茹でればいいよね。
おいおいおい、出汁はどうするんだよ。
ハハハ(笑)。詳しいな小林さん。
ハハハ(笑)。ずうずうしいな小林さん。
スポンサードリンク
[ad#co-3]