沖縄には田芋を使った郷土料理がいくつかある。
田芋のことを沖縄では「ターンム」または「ターム」と呼ぶ。
田芋は水芋で、水のきれいなところにしか育たない芋だ。
沖縄だと、宜野湾市や金武町が有名なターンムの産地である。
田芋は水田で育つため、モグラなどに害されることもなく、
台風などにも比較的強い作物であることから、
昔は、貴重な食糧ともなったのだろう。
画像引用:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A2
これは田芋の葉っぱ。水ハジキが良く、葉は全く濡れない。
ターンムは、茹でるか蒸すかされたものが、
市場には出回わっている。生では、ほとんど流通されない。
その訳は、田芋は水田から収穫すると、
痛むのが早いからなのである。
火を入れる方が、持ちがよくなる上、
いい芋かどうか見分けやすくなるのだそうだ。
ターンムはデカいものが多い。握りこぶしの2個分くらいの大きさのものもある。
…蒸すと、この画像のように表面にヒビが入る。
ヒビが入ると、なんだか悪そうに感じるかもしれないけど、
実はヒビの入る田芋のほうが、質がいい。
しかし、割れていない田芋を見たことがないので、
もしかすると、ヒビの入らないものは、流通に回されないのかもしれない。
田芋はスーパーにも並ぶこともあるんだけど、
いつもあるわけでもないし、割と高い。
そのため一般家庭では、田芋料理は、
普段から頻繁に食卓に上がるものではない。
しかし、田芋は子芋、孫芋を次々に増やすことから、
子孫繁栄をもたらす縁起物として、
沖縄の正月や祝い事などには、欠かせない食材なのだ。
飲食店などでメニューとして扱っているところは、
農家と契約しているか、田芋を専門に扱っている
業者(?私が知っている所は個人)から仕入れている所が多い。
そうでなければ、安定して仕入れることが出来ないのだ。
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田芋を使った料理
田芋は里芋よりも、粘りがあり、独特の甘みがある。
蒸されたり煮たものをカットすると、
断面はぼそぼそっとした感じで、正直おいしそうには見えない。
しかし料理すると、ねっとりほっくりして、これがおいしいんだ。
とくにドゥルワカシーはおすすめ!
これはぜひ食べてもらいたい。
ドゥルワカシー(泥沸かし)
田芋を使った料理のひとつに、
「ドゥルワカシー」というものがある。
漢字で書くと「泥沸かし」だ。
え?沖縄の人って泥も食べるの?
だなんて、考える人もいるかもしれない。
以前、田辺年男というフランス料理のシェフが、
土を使った料理で話題になったりしたこともあるんで、
もしかするとあり得るかもな…だなんて人もいるかもしれない。
しかし、そういうわけではない。
その見た目が、泥のようだから「ドゥルワカシー」という、
名前になったという説もあるように…
確かに、見た目は美しくはない。
しかし、一口食べれば、その滋味深い味わいに、
箸がすすむことは間違いない。
ドゥルワカシーは、ムジと呼ばれる田芋の茎(ズイキ)の部分と、
茹でた豚肉を炒め、ある程度の大きさに切った田芋とカツオ出汁を加え、
さいの目切りにした、干しシイタケやグリンピース、
人参、カステラかまぼこなどと一緒に煮込んで、田芋をつぶし混ぜて作る。
カツオ出汁に、干しシイタケの戻し汁も加え、
一緒にいれた豚肉からも出しが出るので、深い旨味がある。
味付けは、塩と少量の醤油だ。
難しい料理ではないが、手間と時間はかかる。
鍋で煮た後、柔らかくなった田芋をすり鉢にとってつぶす人もいるし、
鍋の中ですりこ木などで、つぶしながら煮る人もいる。
長年使っているうちに、鍋の底が変形してしまうために、
自然とドゥルワカシー専用の鍋になってしまう。
ターンムを使ったその他の料理には、
- ターンムディンガク(田芋田楽)
- ターンムから揚げ
- ムジ汁
- どぅる天
などがある。
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ターンムディンガク(田芋田楽)
田楽というと、一般的には味噌を塗って焼いたものだが、
ターンムディンガクは、田芋を砂糖で甘く煮てつぶしたもの。
つまり、「きんとん」のようなものだ。
っていうか、きんとんそのものだ。
なのに、何故「田楽」という名前なのかは謎。
誰に聞いてもわからないのだ。
(知っていたら、教えてください!)
個人的には、田芋ディンガクはそんなに好きではない。
ドゥルワカシーの方が、何十倍もおいしいと思っている。
しかしこの田芋田楽も、好きな人にはたまらん料理でもある。
私には、甘すぎるんだよなぁ。食べれんことはないんだけれども。
田芋にも甘みがあるから、かなり砂糖を減らしてもいいと思うのだけれど、
だいたい何処で食べても甘すぎる気がするのだ。
ターンムの唐揚げ
ターンムの唐揚げも、ほっくりねっとりして旨い。
正月の重箱にもいれたりする。
重箱に詰める場合には、大きな田芋でなければ大きさが合わないため、
大きな田芋のほうが値段は高くなる。
沖縄の重箱を作る際には、材料の大きさを揃えるということが一番大切だ。
粉をつけてもいいし、素揚げでもいいので、油で揚げるのだが、
火の入っている田芋を使うので、表面が色づいて固まればいい。
熱いうちに砂糖醤油につけるか、フライパンで砂糖醤油をからめて作る。
なので、高温で揚げた方が、カリッと感が失われない。
個人的には、甘みを入れなくてもおいしいと思うし、
なんなら味付けしなくてもおいしいと思う。
(ただ、口の中の水分がなくなるが)
ムジ汁
ムジ汁とは、名前の通り、田芋の茎の部分(ムジ)を入れた汁である。
味噌汁にして飲む。
まあ、特においしいというよりも、
単に珍しいというだけだ。
栄町にも、ムジ汁の専門店があるが、
わざわざいくほどでもないかなぁ。
田芋の専門料理店ならまだしも。
ムジはアクが強いため、下処理の際に手が超かゆくなるので、
ゴム手袋は必須だ。ムジの皮をむいて、水につけてアクを取る。
スーパーでも見ないし、面倒くさいってんで、
現在では、ムジ汁を家庭で作るところは少ないんじゃないかな?
ちなみに、ターンムから切り取ったムジは、
水田に植えるとまたターンムが生えてくるのだ。
ドゥル天
どぅる天とは、「ドゥルワカシー」を形取り、
粉をつけて揚げたものである。
これをはじめてつくったのは、
栄町にある「うりずん」だという噂もあるが、
真相はわからない。
ドゥルワカシーの有効利用として、
割と誰でも思いつきそうなメニューだからだ。
これが、なかなかうまくて、人気もあるので、
最近では、いろんな居酒屋や料理屋で見かけることが多くなった。
実は、ドゥル天用のドゥルワカシーなるものが冷凍物でも販売されている。
これを使う居酒屋も多いのだろうが、味はイマイチ。ドゥル天としては、
食べられるが、ドゥルワカシーとしては、食えたものではないのだ。
もちろん、手作りで作ったドゥルワカシーを、
揚げた方がうまいことには間違いない。
田芋デザートが人気だ!
最近では、田芋を使ったデザートが増えていて、人気である。
まあ、ターンムディンガクという甘い料理もあるので、
デザートにも当然使えるわけだが…
田芋ロールケーキ
田芋プリン
田芋シュークリーム
田芋チーズケーキ
田芋まんじゅう
田芋パイ
田芋餅
田芋タルト
これらは、実際に商品として販売されているんだけれども、
個人的には、田芋ディンガクと一緒で、
やはり甘すぎるんだよなぁ、どれも。
悪いけど、デザートにするなら、紅イモのほうがうまい気がする。
ターンム食べるならドゥルワカシーが最高さー!
…ってことでターンムは、
ドゥルワカシーにするのが最高の食べ方だと思う。
だけど、田芋を使った料理の中でも、
ドゥルワカシーは一番手間のかかる料理でもあるから、
今は、家庭で作るところも少ないみたい。
唐揚げやディンガクは、手間はかからずに作れるんだけどね。
そのせいか、うちなーんちゅでも若い子の中には、
「ドゥルワカシーって食べたことない!」
なんて子もいるから、ぜひ一度は食べろバカヤローと思うけどね。
大平通りに、確か田芋を専門に扱っているところがあったよ。
開南近くの大平通りは、赤い線を引いたところね。
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